会計事務所や税理士法人の業務において、この法人の申告がおそらく本丸でしょう
ここではその法人の申告書の作成について簡単ながら説明していきたいと思います
法人の申告
申告書作成の流れ
- 申告書作成の手順としては大体次のようになります
決算修正→消費税の集計表(納税義務があれば)→消費税申告書作成→内訳書作成→ 法人税申告書作成(地方税含む)→決算書作成(確定)→法人事業概況説明書作成→顧問先の確認→提出
ちなみに税務署に提出しなければいけない書類は以下の通りです
- •法人税申告書および地方法人税申告書
- •適用額明細書(必要があれば)
- •法人事業概況説明書(または会社事業概況書)
- •勘定科目内訳明細書
- •決算報告書
- •消費税及び地方消費税の確定申告書(課税事業者のみ)
- •法人事業税・地方法人特別税・法人都道府県民税の申告書(第6号様式)
- •法人市町村民税の申告書(第20号様式)
- •税務代理権限証書
決算修正
- 決算修正は申告書作成の基本であると同時に最も時間がかかり大切な業務となります
何故ならここで利益そのものが確定するからです
ちなみに決算修正は、通常事業年度は12か月ですので13月の月次作業と言われることもあります
顧問先との連絡は密に
- 決算修正をする際に一年分の取引を見ていけば様々な不明点が出てきます
特に決算の際に一年分の取引を記帳しなければならない法人などのケースだと不明点が山のように出てきます
それらの内容は当然事務所側で分かるはずもなく顧問先に聞くしかありません
そこで別のところでも書きましたが、一年間に一回決算の時だけ取引を記帳するようなケースだと、内容の分からない取引を顧問先に聞いても顧問先も分からず「お任せします」などと返答が返ってくることがあります
こういうケースは出来る限り避けるべきです
お任せしますと言われたところで、顧問先で取引内容が分からないものが会計事務所で分かるはずはありません
こういうケースは月次作業を一年間に一回ではなく、少なくとも数か月単位で行っていればある程度は避けられるものです
別件の話になりますが月次作業は出来る限り一年間に一回というケースは避けるようにしましょう
残高試算表の作成
- 顧問先と連絡などを取り不明点が解消していけば自ずと残高試算表が確定します
……が、ここで作成される残高試算表はまだ中途半端で未完成です
理由はまだ法人税や課税事業者なら消費税がまだ記帳されていないからです
ですがこの段階で一年分の取引を記帳し終えているのなら、前期との比較表なども打ち出し、おかしなところを残高試算表で確認します
前期と対比して何かおかしなところが無いかなどをチェックしていくわけです
そして何も問題が無ければ消費税、そして決算書、内訳書、法人税の税額の計算に移るわけです
消費税の計算
- 納税義務者の判定を行い課税事業者であるならば消費税の計算をしなければなりません
詳しくは消費税の申告のトピックをご覧ください
ここでは消費税に関し説明は省略させていただきます
内訳書の作成
- 残高試算表で各々の科目の残高が確定すると次は内訳書の作成です
正式には勘定科目内訳明細書といいます
残高試算表に記載されている勘定科目の残高の内訳を記載する明細書です
この内訳書の作成は残高試算表にて金額が確定した際に行うのがセオリーではありますが、実務においては決算修正を行っている段階で金額が確定した科目から記入していく場合が多いと思います
ですので特に順番が決まっている訳ではありません
そして内訳書の作成は結構時間がかかります
売掛金や未払金など、それなりの規模の法人ならば何十社もあるからです
実はそれらすべてを内訳書に書く必要はなく、金額の少ないのものはまとめて「その他」の項目で書くことも認められますが、実際に全ての取引先を網羅しておくことには変わりはなく、規模によっては大変な作業になります
申告書の作成
- そしていよいよ申告書の作成です
ちなみに申告書の作成は残高試算表にて税引前当期純利益が確定すれば作成することは可能です
ですので内訳書の作成前に作ることも可能ですので、ここは各々の好きなようにしてください
まずは絶対に提出が必要な申告書の別表を紹介します
- 別表1 各事業年度の所得に係る申告書
- 別表2 同族会社等の判定に関する明細書
- 別表4 所得の金額の計算に関する明細書
- 別表5(一) 利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書
- 別表5(二) 租税公課の納付状況等に関する明細書
- 上記が必ず必要となる別表です
ほとんどの方は別表5(二)から作成する人が多いと思います
次に絶対必要ではないですが、使う頻度の多い別表を紹介します
- 別表六(一) 所得税額の控除に関する明細書
- 別表七(一) 欠損金又は災害損失金の損金算入に関する明細書
- 別表十一(一の二) 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書
- 別表十五 交際費等の損金算入に関する明細書
- 別表十六(一) 旧定額法又は定額法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書
- 別表十六(二) 旧定率法又は定率法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書
- 別表十六(七) 少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書
- 上記が特に必要となるケースが多い別表です
法人によってはさらに必要となる別表は増えていきます
会計事務所に勤務する人たちにとってはこの申告書の作成がやはり一番の仕事と言っても過言ではないでしょう
ミスなく完璧な申告書が作れるよう努力していきましょう - 別表1
- 別表4
地方税の申告書の作成
- 上記は国税の申告書の作成を簡単に説明しましたが地方税の申告書も作らなければなりません
ですが、特に何も問題なければ地方税の申告書作成にそれほど時間はかかりません
せいぜい中間申告の税額を書き込むくらいです
地方税の申告書は二点あります
法人事業税・地方法人特別税・法人都道府県民税の申告書(第6号様式)と法人市町村民税の申告書(第20号様式)です
状況により別表が必要になるときもあります
ちなみに東京都の23区内の法人は東京都の特例として都民税と区民税が一緒になった申告書を提出します
ただ上記で比較的地方税の申告書は作成にそれほど時間はかからないと書きましたが、例外として次の二つは少し作成が面倒になるかもしれません
外形標準課税があった場合とと納税地に異動があった場合です
この2つがある場合は申告書の作成にちょっと手間取るかもしれません
それと地方税は各々の地方で税率が一定ではありません
地方のHPなどで税率を確認しておくのが言いでしょう
それと国税との大きな違いとして地方税には均等割があります
通称ごみ処理費とも呼ばれる税金でこれは赤字であっても納付しなければいけない税金です
そのことも注意しておきましょう
決算報告書の作成
- 実は決算報告書は残高試算表などがある程度出来たときにほぼほぼ完成しています
ですが、最後税額などが確定しないと決算修正にその仕訳が記帳されないためにまだ未完成なのです
申告書で計算した税額を決算修正にて記帳し、そして完璧なる決算書が確定するのです
ですので決算書は申告書のあとに完成されることになります
ちなみに決算書の作成には全く時間がかかりません
会計ソフトには大体決算書の作成機能もついていて、自動的に作成されるようになっています
非常に便利な機能です
ですので決算書の作成はほぼコンピューター任せの事務所は多いと思います
事業概況説明書と税務代理権限証書の作成
- 次は事業概況説明書と代理権限証書の作成です
事業概況説明書は、税務署が法人の業務・業況などを毎年把握するため主要科目や従業員の人数などを簡単に纏めたもので表と裏の一枚の書類です
この書類の作成にもそれほど時間はかかりません
会計データが飛んでくる仕様なら30分ほどで作成は可能です
あと代理権限証書
代理権限証書とは税理士又は税理士法人が、税務代理をする場合にその権限を有することを証する書面です
にこのその証書が添付されていることで、万が一税務署が「税務調査」に入る際に、 事前に事務所に連絡が入るようになります
こちらも大切な書類ですので忘れずに添付するようにしましょう
顧問先への報告
- ここまで来たら申告書や決算書の作成は終了していますので、その内容で大丈夫かどうか顧問先に確認をとらなければなりません
申告書等を紙で税務署に提出しているのなら顧問先の自署押印が必要ですし、電子申告の場合であっても押印の必要はありませんが、いずれにしても顧問先に申告書の是非の確認をとらなければなりません
電子申告の場合はわざわざ顧問先に伺う必要はなく、メールで添付して済ますこともできます
ここで顧問先が税額等を確認しOKが出れば申告書等を税務署に提出することになります
ちなみに顧問先への報告ですが、申告書を見せても顧問先は詳しいことは分かりません
顧問先にとって一番知りたいことは今期の納税額と来季の予定納税の金額です
今の申告ソフトには納税額の一覧表なるものが作成可能でして、それを顧問先に見せて説明するのがいいでしょう
納付書の作成
- 税額が確定し、かつ顧問先の了解も得られたなら次は納付書の作成です
納付書とは税金を銀行などで納める場合に使う書類です
通常は3枚綴りになっており、国税、県税、市税と3種類の納付書が必要となります
消費税がある場合はそちらの納付書も必要になります
一般的には官給紙が支給される際に一緒に納付書も支給されますが、申告書の作成ソフトやそれぞれ県税、市税のHP上でダウンロードすることも可能です
その納付書を作成し顧問先に渡さなければなりません
納付書は税額を顧問先が確認しOKが出てから作成しますが、赤字などで均等割しか納税額が出ないことがあらかじめ分かっている場合は事前に納付書を作成しておくことも可能です
ちなみに納付期限は課税事業年度終了の日の翌日から2か月以内です
申告書等の提出
- 申告書等の作成が全て終わると、その書類を税務署に提出しなければなりません
提出期限は課税事業年度終了の日の翌日から2か月以内となります
ただし株主総会が3月目にあるなどの理由で申告期限の延長の特例の申請を出している場合には申告期限が1月延長されます
ここで気を付けなければいけないのは、申告期限は延長されても納付期限は延長されないということです
つまり納付自体は申告書に見込納付と記載し、2か月以内には済ませないといけないということです
ちなみに消費税の申告に関しては納付期限の延長は認められておりません
電子申告かそうでないか
- 申告書の提出において、電子申告をしているかそうでないかで労力はかなり違いが出ます
電子申告をしているのならば事務所のパソコンで申告は完了します
ですが、実際に税務署に持ち込み、又は郵送で送る場合は申告書等を何部も製本して顧問先に押印してもらい税務署に郵送又は持ち込みをしそこでも押印してもらう訳でしてかなりの手間がかかります
実際古い事務所では申告書等を紙に打ち出し、まだ郵送などで税務署に送ることをしている事務所もあるそうですが、手間や効率を考えれば電子申告の方が便利なのは一目瞭然です
ちなみに郵送で送る場合は事務所用の控と顧問先用の控を返してもらうために返信用の封筒も切手を貼ったうえで同封することを忘れないようにしましょう
まとめ
- 上記が大体申告書の作成を手順通りに簡単にまとめたものです
事務所によっては多少の違いはあるものの大体こんな感じだと思います
申告書の提出が終わり、納付書も顧問先に渡したのならあと事後的作業としては製本した申告書一式を法人控えとして顧問先に渡すくらいです
法人に渡す申告書一式は当然普通に税務署に提出したものは税務署の押印が押されてあるもの、電子申告の場合はメール詳細(税務署の押印の代わりになるもの)を添付して送付します
そこまで終わると申告書作成は終了です
なお、申告した際に参考にした資料は申告資料として綴じて大切に保管しておきましょう
来期の申告でたいへん参考になるものです
そして申告書の作成は初心者なら相当苦労しますが、慣れてくると結構すいすい進むものです
それに会計事務所で働く者としてやはり申告書作成が腕の見せ所でもあります
顧問先と連絡を取り合いしっかりとした申告書を作ることができるよう日々精進していきましょう